子宮腺筋症は現在、子宮内膜症のカテゴリーには分類されず、子宮内膜症とは疫学的にも成因的にも異なる疾患としてとらえられている。子宮腺筋症は組織学的に子宮内膜の基底層部分が何らかの理由で筋層内に浸潤し、本来あってはならない子宮筋層内深くに存在する疾患であす。
子宮内膜癌もまた子宮内膜領域に発症し子宮筋層に深く浸潤し進展することから、良性疾患と考えられる子宮腺筋症が子宮内膜癌の発症に、すなわち筋層内に浸潤した子宮腺筋症部位からの子宮内膜癌の発症の可能性に関して検討することは重要であると思われる。
子宮腺筋症と子宮内膜癌の合併頻度に関して、おおむね20%から40%程度の子宮内膜癌に子宮腺筋症は合併していると考えられる。子宮内膜癌806例中207例(25.7%)に子宮腺筋症の合併が認められている。これは対照とした子宮頸癌での子宮腺筋症合併率に対して若干高い結果となった。
さらに年齢別に層別化することで詳細に検討すると40歳から50歳代に子宮内膜癌における子宮腺筋症の合併頻度に明らかな有意な増加を認めている。したがって2つの疾患の間には何らかの関連性があると考えられる。
その要因としては明らかではないが、PTENをはじめとする遺伝子異常、家族発生が多いことから家族性の遺伝子等を推測することができ、また両者ともエストロゲン依存性疾患であり、40歳から50歳代において有意差を認めていることからホルモンやその代謝過程への影響を含めた環境因子等も推測される。
もし子宮腺筋症が子宮内膜癌の発症部位に関連しているとすれば、それは筋層内ということになり早期発見は難しく、また見つかってもすでに筋層内に浸潤していることとなる。また、体部が急速な増大傾向を見せるものでは、むしろ子宮肉腫を想定して対応すべきと考えられる。
現時点では癌化の恐れのある子宮腺筋症をその可能性のないものと判別する手段はなく、腫瘍マーカー値の変動や子宮内膜細胞診やMRI等の画像診断からこれを総合的に判断するしかないと思われる。
子宮腺筋症の患者では上記で挙げたような定期的な検査を行って腺筋症の評価を継続することが、子宮内膜癌の発症を早期に見つけだす方法と考えられる。